どうしてだろう。

思いも寄らないことが起こったはずなのに

俺はいつもより落ち着いていた。

 

 

 

 

 

 

 

    せめて夢だけで

 

 

 

 

 

 

 

さんから放たれた言葉。

それは俺にとってはとてつもなく衝撃的なことだったのは確か。

でも、

何故か俺は落ち着いてた。

 

まるで

そう言われるのがわかっていたかのように。

 

 

いつか夢に見た、とある出来事。

それはまさにこんな人込みの中で、

そして隣にはさん。

設定はバッチリだった。

内容も、背景も。すべて。

 

今俺のまわりで進む時間と同じだった。

 

俺はさんが好きで、さんは不二が好きで。

この交わることのない想いを、俺はどうすればいい?

 

 

「菊丸くん?」

 

さんが俺を覗き込んでいた。

その表情はすこし心配そうだった。

 

「疲れた?もう帰ろうか?」

「ううん。大丈夫だよ。」

 

俺は心とは裏腹に笑顔で返事をする。

さんを困らせたくないから。

 

見上げた空はまだ満天の星空が広がっていた。

まだ俺にも望みはあるかな。

 

 

 

 

正直、次の日学校に行くのが嫌だった。

さんに会うのが怖いとか、嫌だとかじゃなくて。

不二に会うのが辛かった。

 

同じクラスで同じ部。

1日のうちに離れることなんて皆無に等しかった。

きっと今日学校に行けば絶対に聞かれる。

「昨日はどうだった?」って。

正直に話すべきなんだと思うけど、話して不二のキモチがさんに向いたらと思うと…。

複雑な気持ちで気分が悪い。

 

結局、俺は学校を休んだ。

遅刻はよくするけど、休むなんて初めてだった。

 

休んだことで、考えることがいっぱいあった。

宿題出せないとか、大和先輩に走らされるとか。

一番キモチ的にも重く感じたのは昨日のこと。

俺が居ない学校で、二人はどうしてるんだろう…

もしかしたら…

きっと大丈夫だよね…

考えないようにしようとするほど、脳内はそのこと一色。

頭がパンクしそうだった。

 

 

 

「英二、今まで言わなかったんだけど。」

 

急に不二が出てきた。

隣には…

 

「僕たち付き合うことになったんだ。」

「いままで黙っててごめんね、菊丸くん。」

 

笑顔の不二と、頬を染めているさん。

一番みたくない光景。

 

「そういうことだから、もう英二を応援してあげられないんだ。」

 

のことは諦めて?」そう付け足して不二が言う。

何言ってんだよ。

俺の方が前から好きだったんだよ!!なのに、なのに

なんで今更不二にとられなきゃならないの!?

 

俺は諦めない。

不二がなんと言おうと、二人が付き合っていようと。

俺はさんが好きなんだ。

 

「諦めない!!」

 

 

 

そう叫んだ瞬間、目の前にあったのは部屋の天井。

いつの間にか眠っていたらしい。

でも、

あんな夢を見て、これこそ落ち着いてはいられない。

 

起き上がってケータイを手にとり、不二のアドレスを呼び出す。

けど、あと一歩というところで手を止める。

今不二に電話したからといって、何がどうなる?

今電話したら、不二に全てを話さなくてはならない。

もちろん、そんなことはしたくない。

かといって、さんに告白したとしても

今ならきっと振られてしまう。

 

どうしたらいいんだろう…

 

 

せめてこの夢が、現実になりませんように。

俺はただそう祈ることしか出来なかった。

 

 

夢が現実になったら、俺はどうすればいい?

昨日さんが言った言葉が夢だったらいいのに。

そう思わずにはいられなかった。

 

不二のキモチも気になる。

例え、不二がさんのことが好きだったとしても

俺は諦める気はない。

例え、二人が夢のように付き合うことになったとしても

俺は諦めない。

 

変わりのない想いを抱いたまま諦めるのと

報われない想いを抱いたまま片思いをするのと

どっちを取るのかと言われたら

俺はすぐさま片思いを取る。

こんなに人を好きになったのは、初めてな気がした。

 

例え明日夢が現実でも、それでもいい。

 

俺は諦めない。

 

 

 

そう思えたのは

まだ気付いていなかったからだと、今なら思える。

必死に恋していた時を思い出すように。

 

 

先のことなんて、知らなくていい。

ただ単に、君が好きなんだ。

 

 

 

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