このキモチに気付いた時は

もう、遅かったのかもしれない…

 

 

 


     under the Milky Way





 




なつ、 夏、summer。

といえばお祭りの季節で。

見渡す限りカップルばかり。

それは丁度七夕のお祭りで、人の量が半端じゃない。


俺は人込みを掻き分けながらある場所へと歩く。

そこは人込みを避けた場所で

露店もなく、視界良好。

きっと遠くからでも見つけられると思う。

空を見上げれば天の川。

織姫と彦星も今日はきっと出会えてることだろう。


そんな中、 俺が待つのはただ一人。

前日になって急いで約束した人。









「菊丸くん〜!」






少し遠くの方から呼ぶ声に、俺は笑顔で手を振る。

綺麗な浴衣に身を包み、可愛くセットした髪。

下駄で走り辛そうなのに、必死に走ってくる。


そんな姿が俺にはとても愛しく見えた。



「そんなに走ってこなくてもいいのに。」

「でも、待たせちゃ悪いと思って…遅くなってごめんね?」

「ううん。全然大丈夫!浴衣、とっても似合ってるよ。」

「そ、そうかな?」



そう言ってさんは少し頬を赤くしてはにかんだ様な笑顔を見せる。

さんの表情を見ているだけで飽きなくて

俺の顔も緩みっぱなし。



「じゃ、さっそく行きますか!」

「そうだね。」



俺達は方を並べて露店へと足を運んだ。






前日。

さんを誘おうと決めた日。

俺はすっごく悩んだ。


まだ自分は恋とは自覚してなかったから。


本当に好きなのか、このお祭りで確信しようと思った。

不二にも勧められたし、俺自身もその方がよかった。


たとえ恋と確信出来ても、出来なくても

俺にとっては自己満足にしか過ぎないことかもしれない。

せめて

今日俺に付き合ってくれるさんに楽しい思い出を作ってもらえれば

それでよかったんだ。





「ねぇ、さん。」

「え?」



帰り際に、俺はさんをお祭りに誘った。

それまでなんとなく話したこともあった。

けど、一緒に、ましてや二人でお祭りなんて行けるほど仲良くはなかったと思う。



「あの…今度のお祭り、一緒に行ってくれない…かな?」

「……」



正直ダメだと思った。

そりゃ、そんなに交流があったわけじゃないのに。

断られて当然のように思ってた。

でも…



「…いいよ。」

「…へ?」



さんの言葉に、自分から誘っておいて、聞き直してしまった。

思いもよらない答えだったから。



「本当にいいの?」

「私でいいなら…」

「もちろん!」










俺はさんを誘った時のことを思い出してた。

空は満天の星空。

天の川に見守られながら、俺達は歩く。


となりでは、淡い水色の浴衣に身を包んださんがいる。

アップした髪がいつもの優等生っぽさとは違って色っぽい。

林檎飴を持つ仕草はどこか幼さを魅せる。


俺は知らずの内にさんに見とれてた。

 





「ね、さんって好きな人とかいないの?」



 

 


何唐突に聞いてんだよ俺!

内心、そう叫んでた。



「菊丸くんはいるの?」

「俺は…」



俺は思いっきり頭をフル回転させた。

今日のこと、今日までのこと。

よくよく考えると、俺の中にはさんがいて。

その存在が大きくて。

あまりにも距離が近いから

このキモチに気付けなかったんだ。


俺はやっと確信した。

さんが好きなんだと。



「俺は…」





「私ね…不二くんが…好き…なの…」








たった今、気が付いたのに。

たった今、君に告げようと思ったのに。


どうして


どうして


俺の傍はこんなにも波乱ばかりなんだろう。





俺はさんにキモチを告げることは出来なかった。

俺が好きと言ったら、さんはどう思ったんだろう。

さんは不二が好きで。


こんなことって


こんなことって


俺は誰に当たることも出来ずに


ただ


ただ


何も考えようとしなかった。


頭が真っ白になって

何も考えられなくて

さんのことさえも

不二のことさえも

すべてのことを


今すぐ消し去りたかった。



こんなことなら

聞かなきゃよかったんだ。
 




キモチに気付くのが


遅すぎた…
 






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