君へと宛てた手紙は

君へ届くことを祈り、今もこの空を彷徨っている。

決して届くことはないと知っていても――。




もし届いたら、君は受け取ってくれますか?


 

 







    a fate meeting

 

 








俺は初めて手紙を書いた。

手書きで、1文字1文字気持ちを込めて

君への想いをつづった手紙…。





『好き…』





ふと空を見れば、もう陽が暮れて来ていた。

部活が終わったあと、教室に来て書いていたから、すぐ陽が落ちていく。

本当はもう少し君への想いを書きたかったけど、胸に詰まって書くことが出来なかった。

ただ一言『好き』としか書けなかったんだ。




一言書いた手紙で紙ヒコーキを折る。

その紙ヒコーキを、陽が落ちていく空へ放つ。

君へ届くことをただ祈りながら――。






君と出会ったのは中学入りたての時。

あの頃のことは今でも覚えてるよ。









 

 

 

 







―――――中学1年生、春。




「やーばーい!遅刻だよ!遅刻っ!!」



入学式の次の日。

授業初日だというのに、俺は朝寝坊して遅刻まじかだった。

俺はただ時間だけを気にしながら廊下を急いで走っていた。

だから、角から来る君に気付かずに…



「えっ!うわっ!!」

「え?きゃっ!!」






――ドンッ――






本当ならもっと早く気がついたんだ。

君が角から曲がってくるとこ。

でも、無我夢中で走っていた俺は、周りに注意を配っている余裕なんてなかったんだ。




「いってー。だ、大丈夫?」

「いたっ…。一応…大丈夫です。」

「ごめん。俺、今すんごく急いで走ってたから、君が角を曲がってきたなんてわからなくってさ。」




そう言って、君が持っていたと思われる、廊下に散らばったプリントを拾いながら言う。



「あ、すいません。」

「いいっていいって。俺がぶつかったのが悪いんだし。」

「でも、急いでいるんじゃないんですか?」

「あ!そうだった!!ごめん、少ししか拾えなかったけど…はい。」

「ありがとうございます。」

「それじゃ、ホントごめん!」



俺は拾い集めたプリントを君に預け、俺はまた教室に向かって走り出した。

1階から3階まで駆け上がり、俺のクラスにやっとついた頃には1限目が終わってしまっていた。

俺のクラスは1年6組。面白い男の担任で、クラスには部活が同じテニス部の不二周助がいる。

不二は俺の隣の席。いつも授業中、先生に当てられた時助けてもらってる。


俺が唯一学校での楽しみは放課後の部活だった。

テニスが出来れば嫌な授業だって全然おかまいなしで受けていた。


教室に入ると、不二が声を掛けてきた。



「英二。おはよう?」

「うー。…おはよう。」

「今日は何?寝坊?」

「寝坊だよ。昨日ずっとゲームしててさー。終わるに終われなくて明け方まで…」

「あぁだから今目が赤いんだね。」

「えっ!俺の目赤い?」

「うん。ちょっとだけだけどね?」

「これからまた寝てもいい?」

「それはダメ。」

「うー不二意地悪だ。」

「これも英二のためだよ。…ねぇ、ここ痣になってるけど、どうかしたの?」

「ん?あーこれさっき女の子とぶつかった時できたやつだよ多分。」

「そう。英二にしては鈍感だったんだね。前から来る人にも気がつかないなんて。」

「角から曲がってきたんだよ!俺もその時はすんごく急いでて…」

「はいはい。わかったから。」



ちっとも聞く耳を持たない不二に、菊丸は一層声を大きくして話していた。

ふと窓の外を見ると、体育の授業のクラスがグラウンドにいた。

よく見てみると、その中にさっきぶつかった女の子がいる。

ロングの黒髪を二つに束ね、友達と話をしているようだ。



「あ。不二不二!あのコだよ!さっきぶつかったの。」

「あれ、さんだったの?」

「なんで知ってるの?」

「彼女、結構有名だよ?1年とは思えない美人だって。」

「…そう言われるとそうかも。」



ぶつかった時は急いでて、顔をよく見ることが出来なかったけど

今よく見てみるとすごく大人っぽい顔をしていて、回りの女子達より輝いているように見える。


そう思うや否や、彼女がこちらを向いた。



 

 




――ドキッ――



 


 



彼女と目が合った瞬間、菊丸の心の中で何かが脈打つ。

心臓がドキドキいっている。

顔が勝手に赤くなる。



彼女は菊丸と目が合うと、気がついたらしくお辞儀を1つして授業へと行った。

その時、菊丸は自分の胸の高鳴りの意味をわからずにいた。



"なんでこんなにドキドキするんだろう?"
 

 




訳が解らない菊丸は、不二に相談してみた。



「ねぇ、不二。俺さ、さんと目が合った瞬間こうなんていうかドキドキしたんだよね。」

「英二、それってさんのことが好きなんじゃない?」

「え?俺がさんを好き…?」

「うん。だって、ドキドキするんでしょ?」

「う、うん。」
 


「それは恋だよ、英二。」

 

 



不二は微笑みながら菊丸につげる。



"そっか、これが恋なんだ…"



自分の想いを知った菊丸。

これからこの想いをどうしようか悩んでいた。

でも、まだ『好き』だと伝えられるような恋だとは思っていなかった。

単に気になるだけかもしれない。

でも、それを『恋』と呼ぶなら…?

窓の外の彼女を見ながら、考えていた。


 

 


胸の高鳴りは消えることを知らずに――。



 



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