先輩を大事に想うからこそ

この道を一歩一歩ゆっくり進みたいんだ。

先輩は、

ここにいる理由って、考えたことがありますか?










 

    ここにいる理由





 







俺と先輩は学年が1つ違って、テニス部の部員とマネージャーで。

接点なんてそれでなくても少ないのに、校内で会う機会だって無いに等しいのに。


先輩は、俺のことを好きだと言ってくれた。


俺も先輩を好きだったし、素直に嬉しかった。







俺と先輩が付き合い出してから、何ヶ月経ったんだろう?

休みの日は一緒に出かけたり、他愛もない話をしたり。

傍から見れば、なんの楽しみもないことだけど、俺は先輩と一緒に居れればそれだけで十分だった。


けど、最近先輩の様子がおかしい…

俺と二人で会うと、一緒にいる雰囲気が変わった。

もしかして、俺をもう嫌いになったんだろうか?

俺は、先輩が傍に居なくなったら、どうなるんだろう…?



俺は心配になって、宍戸さんに相談することにした。










「は?が最近おかしいって?」

「はい…」



宍戸さんに「最近、先輩の様子がおかしいんです。」と言うと、眉間にしわを寄せて俺に聞き返してきた。

宍戸さんは先輩と同じクラス。

俺達は、窓辺の席に座っている先輩を廊下から見ていた。




「まぁ、確かに最近授業中も上の空だな。」

「何か考え事でもしてるんでしょうか?」

「そんなの、俺が知るわけねぇだろ。お前が直接聞けよ。」

「それが出来ないから、こうして宍戸さんに聞いてるんじゃないですか。」

「うーん…。お前らさ、付き合ってから進展してんの?」

「な、何言い出すんですか!宍戸さん!!」

「そうテンパるなよ。付き合ってんだから別に悪いことじゃねぇだろ?」

「そ、そりゃそうですけど…。」

「もしかしたらそれが原因かもな。ま、進展してないならって話だけどよ。」



そう言って宍戸さんは次の授業のため、教室へ戻って行った。




やっぱり、先輩は俺が嫌になったのかな。

もう、俺と居たくない?



だめだ。

直接聞かないといけない気がする。

俺に悪い所があるなら言ってよ。

絶対絶対直して見せるから。


俺から離れて行かないで…。



俺の頭はそのことでいっぱいだった。



部活中も、心ここに在らずって感じで、跡部さんに怒られっぱなしだった。

ふと跡部さんの横をみると、先輩が居て。

でも、俺とは目を合わせてくれなくて。


ごめんなさい。先輩。


俺が悪いなら謝るから、俺から離れて行かないで。



 





部活が終わって、帰る時、校門の所を先輩が過ぎたのが見えた。



「そ、それじゃ!お疲れ様でしたっ!」



俺は早々と部室を後にして、先輩に追いつこうと走った。

校門を出ると、先輩はまだすぐ前を歩いていた。



先輩っ!!」



大声で呼ぶと、先輩は驚いた顔をして、俺の方を振り返った。

その驚いた顔も、すぐに崩れ、また何か悩んでるような顔に戻る。

俺は、先輩の所まで小走りで行く。



「先輩…一緒に帰ってもいいですか?」

「…いいよ。」


先輩は、俺を見上げた後下を向いた。


俺と…顔もあわせたくないんですか?






「先輩…俺、何かしましたか?何かしてたら謝ります!すいませんでしたっ!!」



先輩は、また驚いた顔をして俺を見てる。


俺、先輩が好きで好きで…もぅ手放したくないんです。

行かないで下さい。

俺を嫌いにならないで下さい。


 




「違うよ。長太郎が悪いんじゃないよ…」

「え?」



先輩は、今にも泣きそうな顔をしてた。

泣かないで、泣かないで、先輩。



「俺が悪いんじゃないんですか?」

「長太郎は…悪くない。…あたしが…あたしが悪いの…」



先輩の頬に、透明な光る道が出来た。

俺の方を見てくれなくて、ずっと道路を見ている。



「どうかしたんですか?」

「…最近、あたしずっと長太郎を避けてたでしょ?…ごめんね…」

「それは、俺に悪いところがあるからじゃないんですか?」

「長太郎に悪いところなんてないよ…あたしが、あたしが悪いの…」

「言って、先輩。俺、聞くから。」



先輩は一度、俺の方を向いて、それからまた下を向いて話し始めた。



「最近長太郎を避けてたのはね、長太郎に『先輩』って呼ばれるのが嫌だったから。」

「それは…」

「それにね、キスはしてくれるけど、それ以上は無いじゃない。…あたし、魅力ないのかなって思って…」



俺は驚いた。

先輩からそんなこと言ってくると思ってなかったから。



「先輩って呼んでたのは、すいませんでした。そんな風に思ってるとは思わなくて…。」

「長太郎は礼儀正しいから、そう呼んでも仕方ないよ。長太郎から見れば、あたしは先輩なんだし…」

「でも。魅力がないって言うのは違います。絶対に違います。」



俺は先輩をしっかり見据えて言う。

先輩は俺の方を潤んだ瞳で見る。



「先輩は魅力的です。寧ろ、手が出せないくらいです…」



先輩の瞳からは、ひとつ、またひとつと透明な宝石が零れ落ちた。

俺はその宝石ひとつひとつをすくう様にふき取る。



「先輩…いや、は俺にとって大事なんです。この、がいるという道を、俺は一歩一歩ゆっくり進んで行きたいんです。」



の涙は溢れるばかりだった。





は、"ここにいる理由"って考えたことがありますか?」

「"ここにいる理由"?」

「はい。」

「ううん。考えたことは無い。」

「俺はよく考えます。俺はどうしてここにいて、ここにいるから何が出来て、ここにいれば何を得ることが出来るのか。」

「?」

「俺は、に会うために"ここにいる"んです。」

「あたしに会うため?」

に会うためにここにいて、ここにいるからを笑顔にすることが出来て、ここにいるからを愛せる。」

「…ありがとう…」

にとっての"ここにいる理由"は、なんですか?」

「あたしにとって"ここにいる理由"…」



は暫く考えてた。

でもそれはすごく短い時間で、一瞬にも満たないような時間で。



俺の方を向くは、とても笑顔だった。





「あたしの"ここにいる理由"は、"長太郎に会うため"だよ。」









先輩の、の、その笑顔が見たかった。

優しい、微笑みのような綺麗な笑顔。

俺は、その笑顔が好きなんだ。

先輩でも、彼女でも。

その間に線は無く、どちらでも

俺の一番大切な人。

きっと、俺の一生の中でキモチ的に一番重い存在なんだと思う。



困らせてごめんなさい。

でも、それはを想うがためなんです。

が望むなら、のしたいようにすればいい。

俺は、が笑顔なら、それで十分だから。

だから。

全てを俺に話して、打ち明けて。

俺はを包むから――。




"ここにいる理由"

 

君に恋するため

君を愛すため

そして

 

二人を繋ぐ場所だから。


 




End

 

 

++あとがき++

キリ番7000を踏んで下さった日鷹夏梨さまに捧げます。

ちょっとリクから外れてるかもしれないです…。ごめんなさい。

初めて長太郎を書いたけど、いい経験が出来ました!

キリ番Getおめでとうございました&ありがとうございました。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送