たった4年に一度なんだから

4年でもっともいい日にしないと…ね?



 

 





   4年に一度のSpecial day





 

 




たった4年に一度の誕生日の不二周助。

学校では朝から大騒ぎだった。



『不二君ー!!私のプレゼント受け取ってー!!』

『不二君ー!!誕生日おめでとう!!』

『不二君ー!!不二君ー!!』



学校へくるなりずっとこんな調子だった。

本人が嫌がるのはわかるが、他人までも被害に遭っていた。



「不二ー!!もう俺こんなに押し付けられちったじゃん!!」



そう言って菊丸は抱えてきたダンボールを不二の机の上へドサッと置く。

中には綺麗にラッピングされたプレゼントばかり。

ピンクの箱や青い袋。2月という時期だから、きっと中身は手編みのマフラーか何かだと思ってしまうとため息が出る。



「なんでこんなに来るんだろう…」

「は?そんなの不二が有名だからじゃないの?『きゃー不二君かっこいい!』ってさ。」

「そういうものかな?」

「そういうもんだよ。みんな所詮外見だけなんだよねー。」

「英二?それは僕の性格が悪いって言うことかな?」

「え…や、ち、違う違う!そういうんじゃなくって!」

「そう?ならいいけど。」

「でもさ、こんなに受け取ってどうするの?家に持って帰るんでしょ?」

「うん、一応…ね。」

「こんなに女の子からプレゼント受け取ってもちゃんは怒らないの?」

「うーん。どうだろうね?」

「どうだろうね?って…」

「怒ってくれたら僕的には嬉しいんだけどなー。」








不二には1コ下の彼女がいる。彼女のクラスは2年8組。

テニス部の後輩でもある桃城武と同じクラスだ。

2人が付き合いだしたのは、がコートへ見学に来た時、不二に出会ったのがきっかけだった。

綺麗なフォームでプレーする不二に、はいつしか見惚れていた。

不二も同様に、毎日コートに来るが気になっていた。

そして付き合いだして只今1年が過ぎようとしていた。

初めての不二の誕生日。で大忙しだった。




 





「ねぇねぇ桃!プレゼントっていつ渡すものなのかな?」

「さぁなー。それはお前次第じゃねぇの?」

「でもさ、貴重な休み時間に渡すのはどうかと思うんだよね。かといって放課後だとあんまり時間がないし…」

「帰り一緒に帰ればいいじゃねーか。」

「そっか!そうだよね!」

「お前、そんなことにも気がつかねーのかよ。だせーな、だせーよ。」

「う、うるさいなぁ。」

「ま、頑張れよ?」



そう言って桃城は妙笑しながら教室を出て行った。

はゴソゴソと鞄の中を見る。

中には不二のために作ってきたグレーのマフラーがあった。

不器用なにとってこのマフラーを編めたことにとても満足感を持っていた。

それに、マフラーを渡した時の不二の笑顔が脳裏をよぎる。

は必然的に頬が緩んでしまっていた。





 




 






昼休みになっても一向に治まることのないこの光景。



『不二君ー!!これ受け取ってー!!』

『不二君ー!!』



学年などお構いなしでやってくる女の子達。

今度被害に遭ってしまったのは…



「不二。」

「あれ、手塚。どうしたの?そのダンボール…」

「お前に渡してくれとクラスの女子に頼まれたんだ。」



すこし嫌気がさしたような口調で手塚が不二に告げる。



「そっか、手塚まで。…ごめん。」

「仕方ないだろう。お前の容姿がそれほどいいと言うことだ。」

「それは褒めてると思っていいのかな?」

「一応そう言っているつもりだが?」

「フフ。ありがとう。」



手塚が持ってきたダンボールを合わせると計3コのダンボールがプレゼントでいっぱいになっていた。

しかし、これが毎年ではなくてよかったと思うテニス部一同。

放課後の部活でこの思いが一層高まった。



いつもは数十人くらいしかいないコートの周りが、今日は隙間が出来ないほど埋め尽くされていた。



「これでは逆に練習をやりにくいな。」

「どうする?手塚。」

「追い返してもこの場を離れない確立98%」

「うげ、それじゃ何やっても減る気配ないじゃん!」

「あんまりいられるとかえって妨害だよね。」

「お前、さらっとひでーこと言ってんじゃねぇよ。」

「お前が居る方がよっぽど妨害だがな。」

「あ?なんだと?やんのかマムシ!」

「マムシって呼ぶんじゃねぇ!!」

「おいおい、今は喧嘩してる場合じゃ…」



活動時間が始まってから1時間が経とうとしていたが、未だに練習を始めることが出来なかった。

仕方がないので、本日は自主練という形になった。



「みんな、迷惑かけてごめんね。」



不二が気を使いみんなに声を掛ける。

みんなは口々に"今日だけだし、大丈夫"と言う。

今日は4年に一度の大イベントとなってしまった。



 











不二は部室で着替え、がまっている校門へと急いだ。

しかし、ダンボール3コ分のプレゼントは流石に持って帰れないので、そのまま当分部室に置かせてもらうことにした。

は不二が来るのを少し緊張しながら待っていた。

手には、不二に渡すプレゼントを抱えて。

少しすると不二がやってきた。



「ごめんね。待った?」

「ううん、大丈夫です。」

「でも、寒かったでしょ?」



そう言って不二はの手をそっと握る。

の冷たい手が、不二の熱で徐々に暖まっていく。



「暖かい。」

「うん、の手を僕が暖めるから。」

「ありがとうございます///…はい、先輩。」



そう言ってはプレゼントを不二に渡す。



「ありがとう。これ、開けてもいいかな?」

「もちろんですよ。」



不二は箱からグレーのマフラーを取り出す。

そして首に巻いてみた。



「これ、が編んだの?」

「はい。あたし不器用なんですけど、頑張ってみました。」

「うん、上手に編めてるよ。」

「そうですか?よかったー。先輩に気に入ってもらえなかったらどうしようかと思ってて。」

が僕のために作ってくれたものを気に入らない訳ないじゃない。」

「でも、長さがちょっと長くなっちゃって…」

「それはさ、こうやれば丁度いいでしょ?」



そう言って不二はにもマフラーを巻く。

同じマフラーを2人で。



「暖かーい。」

「こうすればくっついていられるしね?」

「もう!そればっかり。」

「ねぇ、は僕が他の女の子からプレゼント貰ってたら怒る?」

「え?何ですか、急に…」

「今日ちょっと英二と話しててね。で、はどう?」

「うーん。あたしは…怒ります。今日だっていっぱい貰ってたじゃないですか。休み時間中ずっと。」

「見てたんだ?」

「そりゃ、気になって…。見てるだけでなんだか嫌でした。」

「フフ。なんだか僕、嬉しいな。」

「え、何でですか?」

「だって、嫌だったのは他の子に嫉妬してるからでしょ?僕を好きな証拠じゃない?」

「え…あ、そ、そうなるんですか///」

「違うの?」

「そうですけど…///」

「よかった。」



2人の間にほのぼのとした空気が漂う。



「それじゃ、帰ろうか。」

「はい。」



不二が差し出した手をはしっかりと握る。

同じマフラーを2人で巻いて、手を繋ぎまだ残雪のこる道を歩いていく。





4年に一度しかないんだから、この1日は良い日にしないとね。

今年は君の僕を好きな気持ちが確信できたからまぁ、いいかな?

また4年後、また君に同じことをいうよ。

"僕を好き?"って。

君はまた同じ答えを返してくれると嬉しいな。







これからはこの4年に一度の日が楽しみになる。

今日がとてもSpecialな日だったから――。








End

 

 

++あとがき++

Happy Birthday Fuji !!

と言う事で、誕生日記念ドリーム完成です!コレ書いたのたった昨日だったり…(汗)

ホント間に合ってよかった。不二が開眼して迫ってきそうだったんで、必死でした(笑)

何はともあれ Happy Birthday!!

(2004,5,20 一部改正)

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