君と出会ったのは、夏も終わりに近づく誰も居ない浜辺だった。

君は何か悲しそうで、どこか淋しそうで…僕はただ、君を見ていることしか出来なかったんだ。

そんな君は今 何を想ってる?



空だけが青く晴れ渡っていた――。









 



    Under the blue sky




 

 




9月からの新学期も始まり、僕は中学生活最後の夏に終わりを告げた。

久しぶりに学校に来ると、少しだけ違和感があるように思えた。

自分の教室、自分の机、友達…。

そのどれもが真新しく、初めて会う感覚。

本当は自分でもよく知っている所なのに。

そんな思いの中でも、僕はあのコのことが脳裏から離れなかった。

始業式も終わり、それぞれの教室へ入っていく。




でも僕は、廊下の一角で立ち止まった。外の空が目に止まる。

青い空に白い雲がぽっかり浮いていた。

風の流れが速いのだろうか、すぅーっと白い雲が青い海のような空の上を滑っていった。

その先には、まだ残暑残る黄金色の太陽があった。

 




教室に入りHRが始まった。

いつも先生の言葉で始まり、先生からの注意で終わる。

毎度の休み明けに行われる、いわばこのクラス独特の行事でもあった。

でも、今回は違った――。



「じゃぁ最後にいつもの注意と行きたいところだが、今回は止めておこう」



教室にざわめきがおこる。



「今回はお前達に紹介しなければならない奴がいる。さ、入ってきなさい。」



そう先生がクラスの皆に告げた。

皆が一斉にドアの方を見る。

ドアが開き、教室内に一層緊張が走る。


入ってきたのは、思いもよらない人だった…。




教室に入ってきたのは、紛れも無く、あのときの女の子だった。

彼女は先生に促され、教壇の前へと行く。



「今日から転校してきたくんだ。皆仲良くするように。」



先生に"何か挨拶しなさい"とでも言われたのか、彼女は口を開いた。



「父の仕事の都合でこの青春学園に転校してきました、と言います。

 青春学園は父の母校なので、楽しく過ごしたいと思います。仲良くして下さい。」



挨拶が終わり、拍手が沸き起こる。


彼女の声は潤い、花びらの様な言動。彼女の容姿にとても合っていた。

すらりと伸びた足、潤いをもつ黒く大きな瞳、栗色の綺麗なウエーブヘアー、そして色白。

そんな彼女に僕は目を離せずにいた…。




彼女の席は僕の2つ前。僕の列は窓側の一番はし。

いつも空を眺めていた僕だったけど、彼女が転校して来てからはずっと彼女を見ていた。

授業中、風になびく栗色の髪がキレイで僕にとっては授業どころではなかった。

彼女と初めて会話をしたのは、彼女が転校してきてから2日後だった。



「あの…次の化学はどこでやるんですか?」



彼女は急に僕に訪ねてくるものだから、僕は彼女の顔をまじまじと見てしまっていた。

近くから見てもキレイに整った顔立ち、大きくくりくりしている透き通った瞳。

そのどれもに僕は一瞬のうちにして虜になっていた。


僕は彼女に視線を奪われていた。



「あの…?」

「えっ!?」

「次の化学はどこで?」

「あ、あぁ。化学は…。」



僕は、彼女に次の化学は実験室でやると伝えても、場所がわからないだろうと思った。



「実験室でやるんだけど…場所、わからないよね?」

「実験室?んー。まだ校内を覚えきれてないから…。」

「じゃぁ僕と一緒に行こうよ。一緒に行けば迷わず行けるでしょ?」

「いいの?」

「もちろん。」



こうして僕は実験室まで、彼女と一緒することになった。

 

 




僕と彼女は休み時間でにぎわう廊下を、一緒に歩いていた。

僕にとっては、彼女の隣を歩けることがとても嬉しかった。

少し歩き、実験室に近づくにつれて人通りも少なくなってきた。

すると、彼女が小さく叫んだ。



「あっ!!」

「え!ど、どうしたの?」

「あ。ごめんね、驚かせて。」

「うぅん、大丈夫。で、どうかしたの?」

「うん、ちょっと教室に忘れ物をしたの。」


そして彼女は"取って来る"と言って、今来た道を戻っていった。


彼女が忘れ物を取りに、教室へ戻ってしばらく時間が過ぎた。

もう予鈴もなってしまった。



「…もしかして…迷ってる?」



僕はそんな予感がした。

まだ彼女と出会って間もないけど、そんな気がしたんだ。

だから、僕は彼女を追うように教室へ駆け足で戻った。


 

 



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