君の香りが一番の癒し
もっと傍で俺を癒して――?
 

 

 




    アロマテラピー

 

 






屋上にでてお昼を食べるのが日課になってきていた。
昼頃になると太陽も高くなり、気持ちがいいからいつも屋上で食べてた。
空を見上げながら寝転んで待ってたら、屋上のドアが開いた。



「英二、遅れてごめんね〜?」



が申し訳なさそうに俺のところに来る。



「いいよ、全然大丈夫!」



に笑顔がないから、俺が笑顔で答える。
そうすると、の顔もだんだん明るくなってくる。

、前俺に言ったよね?

"英二の笑顔を見るとね、嬉しくなるんだよ"って。

に笑顔がなかったら、俺はきっとが笑ってくれるまで笑顔でい続けられる自信があるよ。

 



「今日はね、玉子焼き入ってるんだよ〜。」



は笑顔で俺に言う。
俺、のその笑顔が大好きだよ。



「俺にくれるの?」
「うん、もちろん!英二のために作ってきたんだから〜。」



そう言っては、ピンクのフォークで綺麗に黄色く焼かれた玉子焼きを取り出す。
そのまま玉子焼きを俺の口元に運んで来て、食べさせてくれた。



「ね、英二。…どう?」
「…ん〜…美味しい!」
「ホント?」
「ホントホント!俺のために作ってくれた玉子焼きが、美味しくない訳ないじゃん。」
「よかった〜。」



は安心したように、微笑む。

あぁ、俺はその笑顔も好きなんだ。
その安心したような、幸せに溢れてるってひと目でわかるような笑顔。

大好きだよ――。


 

 

 


 

 








それから俺達は、仲良く話をしながらお昼ご飯を食べてた。
部活のこととか、家のこと、友達のこと――。
他愛もない話ばかりだけど、と話しているとそれも楽しい話になるんだ。


 



春一番の風が俺達の横を過ぎていった。
その時、ふと感じたもの――。



「ね、って今何かつけてる?」
「ん?」
「なんかさっきの風、いい香りがしたんだよね。」
「あ。多分、私の香水だと思うよ?」
「どんな香りなの?」
「ん〜とね…ハイ。」



は鞄の中から、アトマイザーを取り出して俺に渡す。
小さなピンクの小瓶に入ったその香水は、俺がさっき感じ取った香りに似ているけど違った。

こんなにはっきりした香りじゃなく、もっとふんわりとした感じ――。



「んーこれじゃないよ。」
「え、これじゃないの?」
「うん、似てるんだけど…ちょっち違うー。」
「そう?でも、今私はコレつけてるよ?」



そう言っては、俺に耳を近づけて来る。
あぁ、香水って耳の裏とかにつけるんだよにゃ?
ねぇちゃんもつけてたし…。



俺はの耳に鼻を近づけて、くんと少し匂いを感じる。
とても甘い香りがした――。
さっきと似てるけど、さっきよりもふんわりとした優しい香り。



「あ。コレかも。」
「なんだーじゃぁ、さっきので合ってるじゃない。」
「んー、違うよ。」
「えーだってコレを付けてるんだよ?一緒でしょ?」
「ううん。の方の香りはふんわりしてる感じで、元の香水はなんか甘さが強すぎるっていうか。」
「そう?私は同じだと思うんだけどな〜。」
「俺はどっちかというと、の方の香りが好きだな〜。なんか癒されてる…」



そう言って俺は、の肩に向かい合う様にして頭を乗せる。
首筋のほのかな甘い香りが俺を酔わす。



「ちょ、ちょっと英二!何してんの!?」
「ん〜?癒され中〜。の香りってすんごく癒される…キモチいい〜…」



俺はの香りで疲れが癒されていくのがわかった――。
俺はふと顔をあげて、に笑顔で言う。



「ね、コレは香水の香りじゃなくて、の香りだよ。」
「私の香り?」
「うん、そう。俺、この香水の香りよりもの香りの方が好きだよ。」
「あ、ありがとう///」
「俺を一番癒してくれる香り。俺のアロマテラピーだよんv」



そう言って俺はを抱き締める。
俺との周りには、ふんわりとした優しい甘さが広がる。

今だけは、風が吹かないことを願う。
だって、この香りを誰にもあげたくないから。

 



俺だけの、俺専用のアロマテラピー。


 



End

 

++あとがき++

キリ番4500hitを踏んでくださったゆん様に捧げます。

リクが、英二で甘いやつだったので、こんなのになりましたが…。

リク通りになっていたら幸いです。アロマテラピーで癒されたいのは、実はあたし(笑)

(2004,5,20 一部改正)

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